生地の素材と特徴

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「仕立て映えがする」という表現がある通り、使用する生地によって同じ仕立てでも見栄えに差が生じることがある。
スーツの見栄えは、素材の善し悪しだけで決まるわけではないものの、重要なポイントであることに変わりはない。

スーツを仕立てる際は「生地選び」から始まるが、スタイルとサイズが制限される既製服では素材にまでこだわることは難しいので、生地の素材に目を向けるのはオーダーの醍醐味でもある。

動物繊維

主に羊や山羊など動物の毛を使用した天然繊維。
人工繊維では再現が難しい温度や湿度調整など、衣類に相応しい機能が最大の魅力になっている。

ウール ( WOOL )

スーツの生地で最もベーシックな素材が羊毛。
羊の種類によって「メリノウール」や「タスマニアウール」などの呼称があり、ウールという呼称で親しまれている素材。

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特徴:
  • 吸湿・放湿する 断熱性が高いため、夏は涼しく冬は暖かい
  • 伸縮性と弾力性があるため、シワが元に戻りやすい
  • 繊維の表面に薄い膜(キューティクル)があるため汚れにくい
  • タンパク質でできているので燃えにくい

モヘア

アンゴラ山羊の毛を使用した素材。
ヤギは アルプスの少女ハイジ に出てくるような短毛のイメージがあるものの、使用されてるアンゴラ山羊は一見すると羊のような長毛。

スーツ地にはキットモヘア(生後3ヶ月までの仔ヤギの毛)を使用することが多く、生地に張りと独特の光沢がある高級素材。

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特徴:
  • 吸湿性がコットンよりも高く、通気性に優れている

カシミア

カシミア山羊の毛を使用した素材。
生産量が少なく高級素材の代表格で「繊維の宝石」とも呼ばれている。

カシミア山羊はインド・パキスタンの国境付近に位置するカシミール高原に生息しており、産毛のような細い毛のみを使用するため非常に軽く柔らかい。

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特徴:
  • 美しい光沢があり、軽く、柔らかく、暖かい

アルパカ

ラクダ科のアルパカの毛を使用した素材。

薄手で滑りが良いためスーツでは高級裏地として使用される。

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特徴:
  • 軽く薄手ですべりが良い
  • 保湿力に優れ、シワになりにくく丈夫

ビキューナ

ビクーニャはワシントン条約で保護されているアルパカと同じラクダ科の希少動物で、繊維・織物を指す場合はビクーニャではなく、ビキューナと呼ばれる。

南アンデス山脈の高地に棲息しており、その体毛は12 ~13ミクロンと天然繊維の中では最も細く、1頭から採取できる原毛がわずか250g程度のため、非常に希少価値があり「神の繊維」とも呼ばれている。

Material007

最高級素材のため市場に出回ることもほとんどなく、コート1着で数百万円~の価格になる。

再生繊維

主に「天然繊維」を含んだ物質を溶かし、繊維に作り替えたものの総称で、
ペットボトルを再生してつくった繊維も再生繊維と呼ばれている。

レーヨン

絹(シルク)に似せて作られた再生繊維で、原料はパルプやコットンリンター(種子のまわりの産毛)などのセルロース(細胞壁)。

国内で最初にレーヨンを製造したのは「帝国人造繊維」で現在の「帝人」。

帝人 レーヨンから合成繊維メーカーへ

「東レ」も当初は「東洋レーヨン」という社名で、多くの繊維企業がレーヨンを製造していた。

特徴:
  • 肌触りがなめらかで、吸湿、放湿性がよい
  • 美しい光沢があり、静電気を起こしにくい

キュプラ

レーヨンと同じく、パルプやコットンリンターのセルロースから作られる再生繊維で、レーヨンよりも耐久力や耐摩耗性などに優れている。

「ベンベルグ」は旭化成のブランドでキュプラの代名詞にもなっている。

旭化成 ベンベルグ

特徴:
  • 肌触りがなめらかで、吸湿、放湿性がよい。
  • 美しい光沢があり、静電気を起こしにくい。
  • 耐摩耗性に優れている。

リヨセル・テンセル

リヨセルはセルロースを原料とする精製セルロース繊維。

テンセルはオーストリアのレンチング社が製造するリヨセル繊維の登録商標。

Tencel Official Sire 

特徴:
  • レーヨンと比べ非常に丈夫
  • ハリ、コシ、弾力性、上品な光沢がある
  • 水分を吸収しやすく、吸収した水分をすばやく乾燥する

アセテート・トリアセテート

セルロースと酢酸を反応させたアセチルセルロースを、有機溶剤アセトンで溶解することによって作られる半合成繊維。

アセテートよりもアセチルが多いものがトリアセテート。

特徴:

  • 天然繊維のナチュラルな感性と合成繊維の機能性の両方のよさがある
  • 絹のような光沢がある
  • 吸湿性がよく、乾燥性が早い

合成繊維

合繊とも呼ばれる、主に石油を原料とした化学繊維。

ナイロン

アメリカ デュポン社が開発・商品化した合成繊維の先駆けで、日本ではデュポンの技術指導で東洋レーヨン(東レ)が生産。

他の繊維に少し混紡することで、その繊維強度を格段に向上させることができる。

特徴:
  • 強度・磨耗に非常に強い
  • 汚れが落ちやすく、速乾性がある
  • 繊維自体の抵抗力が強い

ポリエステル

テレフタル酸とエチレングリコールを原料としたもので、英国のキャリコ・プリンターズ・アソシエーションが開発し、第二次世界大戦後に英国のインペリアル・ケミカル・インダストリーズ(ICI)社と米国のデュポン社が工業化してICI社が「テレリン」、デュポン社が「ダクロン」という商品名で工業化した。

国内では東レと帝人の共同商標で「テトロン」の商品名が使用されており、毛や綿糸などとの混紡や撚り合せをすることで強度の高い糸を作ることができる反面、静電気を帯びやすく、毛玉になりやすい。

エステルの特徴もポリエステルと同じだと考えて良い。

特徴:
  • ナイロンよりも強度・磨耗に強い
  • 弾性力があり、繊維自体の抵抗力が強い(油類・カビ・細菌などに影響されにくい)
  • 静電気を帯びやすい
  • 毛玉になりやすい

アクリル

米国デュポン社が開発したアクリロニトリル(石油物質)が主原料の合成繊維。

合成繊維の中では最も羊毛に似て、柔らかく暖かみのある肌触りになっている。

特徴:
  • ウールなどよりも強度がある
  • 他の合成繊維と比較して耐光性に優れている

新合繊

新合繊は1987年に東洋紡が開発した自発伸長糸と高収縮糸を組み合わせた異収縮混繊糸「ジーナ」のヒットを皮切りに開発が進み、第4世代の合成繊維とも呼ばれている素材。

人工スエードのジャケットや毛布などに多く使用されている「ピーチスキン加工(薄起毛調)」や、しっとり感・さらっと感がある「レーヨン加工」、ウール特有のコシやふくらみがある「ウール加工(梳毛(そもう)調)」などの種類があり、スーツ地としても利用されている。

植物繊維

植物からとれる天然繊維。

木綿(コットン)

ワタの種子に生えた種子毛繊維を利用した繊維。

希少価値のある長繊維では「エジプト綿」「シーアイランド(海島)綿」「スーダン綿」があり、一般的に(衣料品の90%)は中繊維の「アメリカ綿」「インド綿」が使用されている。

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特徴:

  • 肌触りが良く、涼しい
  • 水・アルカリに強い
  • 縮みやすい

麻(リネン・ラミー)

衣料用として多く利用されているのが「苧麻(ちょま・ラミー)」と「亜麻(あま・リネン)」で「麻」という品質表示できるのも この2種類。

麻は天然繊維のなかでもっとも涼しい繊維といわれ、温度や湿度の高い季節に適した植物繊維素材。

特徴:
  • ラミーは繊維が固く、シャリ感とコシがある
  • リネンは繊維が細く、ソフトでしなやかである
  • 折りジワがつきやすい

その他の天然繊維

絹(シルク)

蚕の繭からとった天然の繊維で、天然繊維の中で唯一の長繊維。

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特徴:
  • 軽く丈夫で柔らかく、美しい光沢がある
  • 吸湿性・染色性・通気性が良い
  • 摩擦に弱い
  • シミになりやすく、太陽光に弱い(黄変する)

品質表示

市販されている衣料品に付いている「品質表示」は、家庭用品品質表示法 に基づいて、使用されている素材の表示が義務付けられている。

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スーツで使用される「羊毛」「モヘア」「カシミア」「アンゴラ」などの動物繊維は繊維の名称と「毛」という表記が許されているため、品質表示に「毛」と表記されている場合は「獣毛全般」を意味している。

繊維の名称を示す用語 消費者庁

 

オーダースーツに品質表示がない理由

家庭用品品質表示法の対象となる「家庭用品」の定義は次の通り。

  • 一般消費者がその購入に際し品質を識別することが著しく困難であり、かつ、その品質を識別することが特に必要であると認められるものであって政令で定めるもの
  • 繊維製品の原料又は材料たる繊維製品のうち、需要者がその購入に際し品質を識別することが著しく困難であり、かつ、同号の政令で定める繊維製品の品質に関する表示の適正化を図るにはその品質を識別することが特に必要であると認められるもの

既製品を購入する場合、商品を触っただけでは使用している素材を識別することはできないため品質表示は必要になるが、オーダースーツの場合は仕立てる際に生地や裏地を自ら選んでおり、その際に生地の品質を把握できるため、家庭用品品質表示法の対象とはならない。


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